王族の谷
マーシュくん、待たせたな。
もういつでも琥珀の谷へ向かうことができる。
きみの準備が整いしだい、谷へ行くことにしよう。
ジャッジマスター・シド
(琥珀の谷。シドとマーシュがやってくる。) (マーシュ立ち止まる。見上げる。) |
||
マーシュ | なんてきれいなんだろう。 | |
(シド、振り向く。少し歩く) | ||
シド | かつてのイヴァリース王が国の繁栄と平安を願って建てたものだ。 離宮というより、むしろ聖堂といった方が正しいかもしれんな。 |
|
マーシュ | ここにミュートが・・・。 | |
(ふたり、歩き出す。バブズがうつぶせに倒れているのを見つける。) | ||
マーシュ | バブズ! | |
(駆け寄る。) | ||
マーシュ | バブズ、一体何があったの!? 返事をしてよ! | |
〈声〉 | 死んではいない。気絶しているだけだ。 | |
(正面からレドナ登場。シド、マーシュともにレドナを見る。) | ||
マーシュ | レドナ・・・・・・。 | |
シド | 私たちは女王とミュートに会いに来た。通してくれ。 | |
レドナ | ジャッジマスターだろうと、ここから先へは行かせない。 | |
シド | マーシュくん、どうする? | |
マーシュ | ・・・ぼくは行きます。ミュートに会いたいんです。 | |
シド | そうか・・・。ならば私も手を貸そう。 | |
(シド、カードを手に取る。マーシュ、シドを見る) | ||
マーシュ | ジャッジマスター、そのカード・・・。 | |
シド | やはり、用意しておいて正解だった。 これを使えばレドナと互角にやりあえる。 |
|
(マーシュ、レドナを見る。) | ||
シド | レドナの身にかかりし守りのロウよ、去れ!! | |
(カード、発動。) | ||
レドナ | なんだ、これ・・・? このカードは・・・。 | |
シド | 女王がお前に与えたロウ、「フォーチュン」を打ち消した。 これでおまえも無敵と言うわけにはいくまい。 |
|
レドナ | ・・・気に入らないな。ジャッジでなかったら、消してやれるのに。 | |
(敵、登場。銃使い、忍者、ン・モゥ族幻術士、アサシン、錬金術士。) 〈エンゲージ開始。) (レドナ戦闘不能。うずくまる。) |
||
レドナ | うっ・・・く・・・。 なんか、体が変だ・・・。 どうしたんだ・・・っ。 ボクは勝つ・・・、ボクは負けない・・・・・・。 だれ、に、も・・・。 ぅあっ・・・!! |
|
(レドナの体が石化し、崩れる。マーシュ、バブズを見る。) | ||
マーシュ | バブズ・・・! バブズはっ!? | |
(バトル終了。暗転。) (バブズが倒れている。屈んでバブズを見ているマーシュ。少し離れてシド。) |
||
バブズ | う・・・・・・ん・・・。 | |
マーシュ | 気がついた! | |
(バブズが体を起こす。) | ||
マーシュ | バブズ、大丈夫? | |
(立ち上がるバブズ。続いてマーシュも立つ。) | ||
シド | バブズ。 | |
(シドの方を向く。顔だけ動かし、マーシュを見る。) | ||
バブズ | シド様・・・ それに、おまえ・・・。 | |
(辺りを見回す。) | ||
バブズ | !!王子! ミュート王子は!? | |
シド | ここにはいない。 私たちだけだ。 | |
マーシュ | ミュートはこの奥にいるんでしょう? | |
バブズ | ああ。 女王様とご一緒のはずだ。 | |
(バブズ、歩く。すぐにうずくまる。マーシュが駆け寄る。) | ||
マーシュ | ムリしたらダメだ! | |
バブズ | くっ・・・、思ったよりダメージが大きいようだな・・・。 | |
シド | バブズ。おまえはここに残っているんだ。 | |
(立ち上がるバブズ。) | ||
バブズ | しかし、シド様!! | |
シド | 私にこれ以上、心配をかけさせてくれるな。 | |
(うつむくバブズ。) | ||
バブズ | ・・・わかりました。 | |
シド | すまない、バブズ。 私の到着が遅れたせいで、おまえにケガをさせた。 |
|
(首を振る) | ||
バブズ | 私のことなどかまいません。 それより王子を・・・。 王子はきっとシド様を待っておられます。 |
|
シド | 案ずるな。私が何のために来たと思っている? | |
(バブズ、マーシュの方を向き、頭を下げる。) | ||
バブズ | 王子をたのむ。 | |
(頷くマーシュ。) | ||
マーシュ | 大丈夫。 今度はちゃんと話をしてくるから。 | |
(マーシュ、シドを見る。) | ||
マーシュ | 行きましょう。 | |
(扉を開け、入っていくマーシュとシド。見送るバブズ。暗転。) (広間。2人が入ってくる。俯いたレメディがいる。) |
||
レメディ | レドナは・・・消えてしまったのね。 | |
(マーシュ、両手を広げて叫ぶ。) | ||
マーシュ | ミュートはどこですか? ミュートに会わせてください! | |
レメディ | かわいそうに・・・。 ミュートはまたひとつなくしてしまったわ。 |
|
(マーシュ、頭を振る。) | ||
マーシュ | ミュートは何もなくしていません。 そう思いこんでるだけだ。 | |
(レメディ、顔を上げ、マーシュを見る。) | ||
レメディ | この世界はすべて幻想。 手に入れたと思っているだけで、本当は何ひとつ持っていない。 あなたはそれを受け入れられたの? |
|
(頭を振るレメディ。目を伏せる。) | ||
レメディ | いいえ、あなたはまだ望んでいるわ。 いさかいのない家庭、両親からの深い愛情、そして、強い力を持つ自分。 それはこの世界でのあなた。 本当のあなたの姿。 違うのかしら? |
|
(レメディ、顔を上げる。マーシュ、うつむく。正面を見る。) | ||
マーシュ | 確かにぼくはそう望んだ。 でも、そんなぼくはいない。 この世界で変わったような気がしてたけど、違うんだ。 今までのぼくが全てだ。 「本当のぼく」なんていやしないんだよ! |
|
(両手を広げる。) | ||
マーシュ | ミュートだってそのことをわかってる。 だから今、迷ってるんだ。 ミュートに会わせてください。 ぼくはミュートと一緒にこの世界から帰りたいんだっ! |
|
(レメディ、横を見る。) | ||
レメディ | ミュート、どうしようか? ママはミュートの味方よ。あなたの言う通りにしてあげる。 |
|
『ママ・・・・・・ボクは・・・・・・』 | ||
マーシュ | ミュート、どこだっ!? | |
(ミュートが女性のレリーフ(?)の手のひらの上に現れる。うつぶせに横たわっている。) | ||
シド | ミュート!! | |
レメディ | ママはいない方がいい? | |
『イヤだ・・・! まだママと別れたくない!! ボクをひとりにしないで・・・っ!』 (ミュート、消える。) |
||
マーシュ | ミュートっ!! | |
レメディ | おさがりなさい。 これはミュートが望んだこと。 | |
(レメディのドレスがなびき、戦装束に変わる。手には得物。) (アドラメレクとファムフリートが召喚される。) |
||
シド | レメディ・・・・・・。おまえはミュートの意思そのものなのか? | |
レメディ | 私は望みをかなえる者。 ここにいたいという強い望みはミュートから。 そして、かすかだけれどもうひとつ。 |
|
(マーシュ、俯く。) | ||
マーシュ | ぼくは・・・・・・。 | |
(顔を上げる。) | ||
マーシュ | ぼくはあなたの言うことを否定しない。 けど、ぼくは望みの中に逃げたりしない。 もう、迷うもんかっ! |
|
(エンゲージ開始。) (勝利条件達成。エンゲージ終了後、広間にうずくまっているレメディ。) |
||
レメディ | ミュート・・・・・・。 | |
(レリーフの上にうつぶせになったミュートが現れる。) | ||
マーシュ | ミュート、ぼくだ! 会いに来たんだ! | |
(シドが駆け寄る。) | ||
シド | ミュート!! | |
『いじめられたくない・・・・・・ しっかりしてよ、パパ・・・・・・ ママ、ボクをひとりにしないで・・・』 |
||
(マーシュ、一歩前へ進み、両手を広げる。) | ||
マーシュ | ミュート! ぼくがきみの力になるよ! 一緒に帰ろう、ミュート! |
|
『もうひとりのボクはわかってる・・・・・・。 帰ろうって言ってる・・・・・・。 けど、ボクはまだ望んでる・・・・・・。 ボクの思い通りになる、ボクの作った世界を・・・・・・!』 (レメディ、立ち上がりミュートの横たわる石像の前に立つ。) |
||
レメディ | 私はすべての望みを集め、すべての望みをあらわす。 世界は望みで成され、その世界は2つの世界にくさびをうつ。 |
|
(シド、後ろに下がる。) (レメディ、左手を掲げる。光。レメディ、リィ・グリモアに変わる。) |
||
マーシュ | こいつは・・・!? | |
シド | こいつはもうレメディじゃない。 逃避や願望の象徴・・・、 おそらくこの世界を形作るあらゆる意思のカタマリだ。 |
|
マーシュ | 望みのカタマリ・・・・・・。 これが消えれば、世界は元に戻る・・・!! |
|
(リィ・グリモア、腕を上げる。マティウスが召喚される。) (エンゲージ開始。) |
||
マーシュ | ミュート! 目を覚ましてよ、ミュート!! ぼくだけじゃダメだよ! ミュートも一緒でなきゃ、こいつを壊したところでなんの意味もない! |
|
『・・・マーシュ・・・・・・?』 | ||
マーシュ | ミュート! ぼくの声がきこえるの!? | |
『マーシュ・・・・・・ボクは・・・・・・帰り・・・・・・。』 | ||
マーシュ | ミュートっ!! | |
(エンゲージ続行。) (リィ・グリモアを倒す。ミュートが起き上がる。) |
||
ミュート | ママ・・・・・。 | |
(リィ・グリモア、砕ける。ミュートが消える。) | ||
マーシュ | ミュート!! | |
(暗転。) (エンディングへ。) |