丘を越えて

シエンナ峡谷で琥珀を見つけてほしい。琥珀は太陽光の結晶と言われるほどの力があり、
私の必要とするアンチロウを作るのにはかかせないようだ。
  ジャッジマスター・シド

(シエンナ峡谷。高台にリッツクランが待ち構えている。)
(顔を伏せるリッツ。)
リッツ ふふ。
(隣にシャアラがいる。リッツを見る。)
シャアラ どうしたの? 急に笑ったりして。
(肩を揺らすリッツ。)
リッツ マーシュってね、あっちではいじめられっ子だったの。
(顔を上げる。)
リッツ そんないじめられっ子と正面きってケンカするんだって思ったら、
なんだか急におかしくなってきたの。
(正面を向くシャアラ。)
シャアラ マーシュはもういじめられっ子じゃないよ。
(リッツも前を向く。)
リッツ そうね。 そうなのよね・・・。
(前へ進むリッツ。谷からマーシュが現れる。)
マーシュ リッツ・・・。
リッツ とうとう、こんなことになっちゃったわね。
マーシュ リッツ、ぼくは・・・
(首を振るリッツ。)
リッツ 話はやめましょ。
マーシュが先へ進むって言う限り、あたし、ひく気はないから。
(頷くマーシュ。)
マーシュ うん。ぼくもリッツと同じだよ。
ミュートに会うためにも、この谷を通りたいんだ。
(エンゲージ開始。)
リッツ 行こう、シャアラ!
(頷くシャアラ。)
(戦闘。)
シャアラ リッツ、やめてもいいんだよ。
足止めだけならあたしたちだけで平気だ。
リッツ 大丈夫。
あたし、自分自身にウソはついてないもの。 最後までやれるわ。
シャアラ なら、いいんだ。 そこまで決めてるなら。
余計なこと聞いてごめん。 もう何も言わない。
(戦闘。)
マーシュ リッツは始めからずっと言ってた。 世界を戻す気はないって。
それは、いつかだれかが世界を戻すって、わかっていたから?
リッツ ・・・そうかもしれない。
だってゲームは必ず終わるものでしょ?
ゲームが楽しいのは終わりがあるからよ。
でも、それを終わらせたくないと思うのはまた別の話だわ。
マーシュ うん。 リッツの言ってること、よくわかるよ。
リッツ だから、あたしにできることは全部やるって決めたの。
世界が戻ることが絶対に決まっているとしても、あたしは抵抗する。
後悔だけはしたくないから。
(戦闘。)
(リッツ、戦闘不能に。)
マーシュ リッツ・・・。
(エンゲージ終了。)

(マーシュに背を向けているリッツ。顔を伏せている。隣にシャアラ。)
マーシュ 一緒に行こうって言っても、来てくれないんだよね。
リッツ あなたに道を譲ってあげるけど、あたし自身の考えが
変わったわけじゃないから。 それは覚えておいてね。
(顔を伏せるマーシュ。)
マーシュ うん・・・わかった。
(顔を上げる。)
マーシュ じゃあ、ぼくは行くよ。 ジャッジマスターが待ってるんだ。
(背を向け、歩く。橋の反対側で立ち止まりうつむく。振り返り、呼びかける。)
マーシュ リッツ!
世界が戻ったら、ぼくをうらむ?
(顔を上げ、振り向く。シャアラもマーシュを見る。)
リッツ うらまないわ。
マーシュがしようとしてることは、別にまちがいじゃない。
あたしがこの世界にいたいって思うだけ。
(マーシュ、頷いて去る。)
リッツ マーシュは世界を元に戻すわね。
(シャアラ、リッツを見る。)
シャアラ そう思うの?
(頷く。うつむいている。)
リッツ マーシュは変わったもの。 だからきっとやりとげると思うわ。
でも、あたしは・・・・・・マーシュみたいに変われない・・・・・・。
(シャアラ、歩く。リッツの後ろから話しかける。)
シャアラ 行こう、リッツ。 リッツはまだここにいるんだから。
(リッツ、振り返って頷く。2人、去る。)
(暗転。)
(クエストクリア。)