贈り物の日
いよいよ、王宮ベルベニアで女王陛下および王太子殿下の謁見式が行われる。
つつがなく式が進むように、宮廷ではきびしい警護をしているようだ。
ベルベニアプレス記者
| (ベルベニア王宮、城門前。通行人に混じってモンブランとマーシュがやって来る。) (堀に架かる橋の前で立ち止まる。) |
|
| モンブラン | マーシュ、おどおどしないで普通にするクポ〜。 |
| マーシュ | だって・・・ぼく、宮廷から賞金をかけられてるし・・・。 もっとこう、変装するとかした方がいいんじゃないかって・・・。 |
| モンブラン | マーシュの顔を知ってる人なんて、たかが知れてるクポ〜。 堂々としてればバレないクポ。 |
| (ふたり、歩き出す。歩きながらマーシュ、話す。) | |
| マーシュ | それにしても、ノノってすごいな。 ドネッドのせいでマテリア晶石はほとんどダメだったけど、 ちゃんと贈り物を作ってくれたんだもの。 |
| (城門手前で立ち止まるふたり。モンブラン、頷く。) | |
| モンブラン | クポポ〜。 あいつは逆境に強いタイプだクポ。 |
| マーシュ | この「ルゲイエボーグ」なら、きっとミュートも気に入るよ。 |
| (ふたり、場内へ入っていく。) (室内。落ち着かない様子のマーシュ。モンブラン、それに気付き、そばに来る。) |
|
| マーシュ | ・・・遅いね。 部屋にいた他の人は、みんな呼ばれていったのに。 |
| (顔を伏せるモンブラン。) | |
| モンブラン | クポ〜。 これは何かあったかもしれないクポ。 |
| (モンブラン、顔を上げる。) | |
| マーシュ | なにかって? |
| モンブラン | 謁見中にトラブルがあったとか、あるいは・・・。 |
| (ドアの開く音。マーシュ、振り返る。 グラディエーター、モーグリナイト、神殿騎士、錬金術士が入ってくる。) |
|
| モンブラン | マーシュの正体がバレたとか・・・クポ。 |
| 神殿騎士 | この少年だ。捕らえるぞ! |
| モンブラン | ここまで入れたのに、今さらバレるなんてヘンだクポ! |
| 神殿騎士 | 善意ある者が通達してくれたのだ! |
| マーシュ | ドネッドのしわざだ・・・! |
| (腕を振り上げる神殿騎士。) | |
| 神殿騎士 | 少年を捕らえろ! |
| (エンゲージ開始。) (全ての敵を倒した後、) |
|
| マーシュ | やっと宮廷に入ることができたんだ。 なんとかしてミュートに会わなくちゃ。 |
| (エンゲージ終了。) (部屋を出ようと走るマーシュ。 足音がする。警備の守護騎士・竜騎士が登場する。身構えるマーシュ。) |
|
| マーシュ | だめだっ! このままじゃ捕まる! |
| (光。バブズが現れる。騎士たちに魔法をかける。騎士の動き、止まる。) (バブズ、マーシュの方に振り返る。) |
|
| マーシュ | バブズ・・・ぼくを捕まえに来たんじゃないの? |
| バブズ | 来い! 王子のところへ連れていってやる。 |
| (事情がわからないマーシュ。 バブズ、両手を広げて言う。) | |
| バブズ | 王子に会いに来たのではないのか!? |
| (頷くマーシュ。) | |
| マーシュ | う、うん。そうだけど・・・。 バブズ、どうしてぼくを助けてくれるの? |
| バブズ | カンちがいするな。 私はおまえを助けに来たワケではない。 |
| (顔を逸らす。) | |
| バブズ | 私は王子の真意を知りたいのだ。 それにはおまえの力を借りねばならん。 |
| マーシュ | ぼくが、きみの力に? |
| バブズ | 「あちらの世界」のことを私は何もわかってさしあげられない。 くやしいが、王子と同じ世界にいたというおまえでなくてはダメなんだ。 |
| マーシュ | バブズ・・・。 |
| バブズ | ・・・時間がない。行くぞ。 |
| (頷くマーシュ。バブズ、マーシュの体をテレポートさせる。バブズもテレポートする。) (玉座の前。ミュートが神経質に行ったり来たりしている。) (バブズがやって来る。ミュート、気が付く。) |
|
| ミュート | バブズ、どこに行ってた! |
| (頭を下げるバブズ。) | |
| バブズ | 人を呼びに行っておりました。 |
| ミュート | あ・・・そうか。 ママを呼びに行ってくれてたのか。 |
| (バブズ、あごでマーシュを促す。脇に下がる。マーシュ、歩いてくる。) | |
| マーシュ | ミュート! |
| (ミュート、段を一つ降りる。) | |
| ミュート | マーシュ・・・!! |
| (バブズをにらむ。) | |
| ミュート | バブズ、おまえが呼びに行ったのはママじゃないのか!? |
| (バブズ、ミュートの方を向き、顔を伏せる。) | |
| ミュート | おまえもボクを裏切るんだな!? パパみたいに、おまえも! |
| (バブズに駆け寄るマーシュ。) | |
| マーシュ | ちがうっ!ちがうよ、ミュート。 バブズは本当にきみのことを考えてる! |
| ミュート | なら、ボクの前にマーシュなんか連れてくるもんかっ! ボクは捕まえろって言ったんだぞ! |
| マーシュ | バブズは確かめたいんだ! ミュートはただ逃げてるだけなのか、そうじゃないのかって。 |
| (ミュート、バブズを見る。) | |
| ミュート | バブズ、どういうことだ! |
| バブズ | ・・・ここは逃避のために作られた世界とききました。 ならば、このイヴァリースにい続けることを、王子自身がはがゆく 感じられているのでは、と思ったのです。 |
| (顔を上げる。) | |
| バブズ | 本当は王子も考えておられるのではありませんか? 「あちらの世界」の現実に向きあうべきなのだと。 |
| ミュート | だまれっ!それ以上言うなっ!! |
| (バブズ、両手を広げて言う。) | |
| バブズ | 王子はしっかりしたお方です。 「こちらの世界」が持つ意味もよくおわかりのハズ! |
| (顔を伏せ、頭を振るミュート。) | |
| ミュート | うるさい、うるさいっ! そんな簡単にいくもんかっ!おまえに何がわかるっ! |
| バブズ | ・・・そうです。 残念ながら、私には王子の苦しみがわかりません。 だからこの者を連れてきたのです! |
| マーシュ | ミュート・・・。 |
| (顔を伏せたまま言う。) | |
| ミュート | ・・・マーシュはいいよ。帰れるんでしょ? あっちへ。 でも、ボクはちがう・・・。 ここでなきゃダメだ。 とても元の世界には帰れない。 イヤなんだ・・・! |
| (首を振るマーシュ。) | |
| マーシュ | ぼくも同じだよ。 たぶん心のどこかでこの世界を望んでると思う。 そうでなかったら、最後のクリスタルがわれたとき、世界は戻ったハズだ。 |
| (ミュート、頭を抱える。) | |
| ミュート | 帰ったら、またみんながボクをいじめる! パパもお酒ばっかり飲むんだ。 魔法の力がないと・・・ ボク一人じゃムリだよ。 何も変えられない・・・! |
| (腕を下ろす。顔は伏せたまま。) | |
| ミュート | ママ・・・どうして急にいなくなったの・・・? パパも、ボクも・・・まだママが必要だったのに・・・。 |
| (ミュートに近づこうとするマーシュ。レメディが現れ、ミュートの側に立つ。) (レメディとミュート、向き合う。) |
|
| レメディ | ママはそばにいるわ。 ミュートが望むなら、いつまでだって。 |
| (レメディに抱きつくミュート。) | |
| レメディ | ママ、ママ・・・! |
| (マーシュが前に出て叫ぶ。) | |
| マーシュ | だめだ、ミュート! その人はママじゃないよ! |
| (ミュートを抱えたまま、レメディがマーシュを見る。) | |
| レメディ | なぜミュートをひき戻そうとするの? こんなにイヤがっているわ。 |
| マーシュ | ミュートだって逃げたくないと思ってる! ぼくもバブズも、ミュートの助けになりたいんだ! |
| (レメディ、ミュートを抱きしめて尋ねる。) | |
| レメディ | つらい思いはイヤよね? 楽しい方がいいわよね? |
| マーシュ | ママの言葉を聞くんじゃない! ミュート、きみが自分で決めるんだ! |
| ミュート | ボクは・・・ ・・・帰りたくない。 ママと一緒にいたい。 つれていって、ママっ!! |
| (少しだけ体を離すレメディ。) | |
| レメディ | わかったわ。 ママと行きましょうね。 ママはずーっとミュートのそばにいてあげる。 |
| (ミュートの体、消える。レメディも消える。) | |
| バブズ | 王子っ! |
| (ミュートとレメディが消えた場所に近づこうとするバブズ。阻むようにレドナが現れる。) | |
| バブズ | どけ、レドナ! おまえも王子の従者なら、女王と王子を追え! |
| (ちらりとバブズを見る。) | |
| レドナ | ボクは、ボクだ。 ボクは望んでここにいる。 |
| バブズ | おまえ、なにを・・・っ! |
| マーシュ | バブズ! ここはぼくが引き受ける! きみはふたりを追うんだ! |
| (体の向きを変え、マーシュに話す。) | |
| バブズ | 先ほど、シド様にも使いを出した。 すぐにここへいらっしゃる。 それまで持ちこたえろ。あとはシド様がおまえを助けてくださる。 いくどか剣をまじえることになるだろう。しかし、そう長くはかからないハズだ! |
| (頷くマーシュ。) | |
| マーシュ | わかった。 それまではがんばってみるよ。 |
| (バブズ、姿を消す。) | |
| レドナ | 邪魔するヤツは・・・ いなくなれ! |
| (エンゲージ開始。) | |
| マーシュ | 前に会ったときと同じだ。 やっぱりヘンな感じがする。 こいつ・・・何者なんだ? |
| レドナ | 何度やっても変わらない。 おまえはボクに勝てない。 |
| マーシュ | ジャッジマスターが着くまで、それまで持ちこたえるんだ! |
| (戦闘続行。) (数ターン経過後、シドが現れる。)(チョコボなし。) |
|
| マーシュ | ジャッジマスター! 来てくれた! |
| レドナ | ・・・惜しかったな。 今度はいけると思ったのに。 |
| (レドナ、姿を消す。 エンゲージ終了。) | |
| シド | ミュートたちは・・・? |
| (首を振るマーシュ。) | |
| シド | そうか・・・。 |
| (暗転) (エンゲージの行われた部屋。中央にシドとマーシュがいる。) |
|
| シド | ・・・バブズはふたりを追っていったのか。 |
| (頷くマーシュ。) | |
| マーシュ | ジャッジマスター。 レドナって、いったい何者なんですか? バブズと同じ従者なのに、ふたりはちがった立場にいるみたいだし、 それに何ていうか・・・ 妙な感じがするんです。 |
| (頷くシド。背を向けて少し歩く。) | |
| シド | あれは、ミュートだ。 |
| マーシュ | !? |
| (マーシュのほうを向く。) | |
| シド | 正確に言うなら、ミュートの感情から作り出した人形だ。 ミュートのもっとも激しい部分だけを持っている。 |
| マーシュ | なんでそんなもの・・・。 |
| シド | 神獣と同じようなものだ。 レドナはクリスタルとミュートを守るために作られた。 |
| (顔を逸らす。) | |
| シド | 本来、私がその役目をやるはずだったのだが、 こんなことになってしまったからな。 |
| マーシュ | ・・・・・・。 |
| (マーシュの方へ歩く。) | |
| シド | 私もミュートたちの行方を追おうと思う。 |
| (俯くマーシュ。) | |
| マーシュ | ぼくにミュートを探す手だてはありません。 バブズとあなたに任せます。 |
| (顔を上げる。) | |
| マーシュ | その間、ぼくは弟や友達・・・リッツに会うつもりです。 あのふたりとも、話をしておかないといけないから。 |
| シド | ミュートたちを見つけたら、きみにも知らせよう。 |
| (マーシュ、頷く。) | |
| マーシュ | お願いします。 |
| (シド、姿を消す。) | |
| マーシュ | ぼく自身も・・・もういちど、ちゃんとケジメをつけるんだ。 |
| (歩いて出て行くマーシュ。) (暗転) (【贈り物の日】クリア。) (パブのカウンターにいるマーシュ。後ろにン・モゥ族幻術士・青魔道士・狩人がいる。) |
|
| 幻術士 | 女王がしばらく宮廷を留守にするって? |
| (反応するマーシュ。体の向きを少しだけ変える。) | |
| 青魔道士 | 王子も一緒だとさ。 |
| 狩人 | ジャッジマスターもか? |
| (首を振る幻術士。) | |
| 幻術士 | 宮廷を出た手前、一緒にはいないだろう。 |
| (首をかしげる青魔道士。) | |
| 青魔道士 | 行き先くらいは知らされてるんじゃないのか。 |
| 狩人 | どうだか。 なにせ宮廷の秘密主義は徹底してるからな。 |
| (首を振るマーシュ。独り言。) | |
| マーシュ | いや、バブズかジャッジマスターがきっと見つけてくれる。 ぼくは、ぼくがするべきことをやればいいんだ。 |
| (暗転) | |