音なしの砂
「鳴き砂」の名所、デライラ砂丘の砂が急に鳴かなくなってしまいました。
おかげで鳴き砂のツアーはキャンセル続きです。原因を調べてください。
キャメル旅行代理店
(デライラ砂丘にいるマーシュ。風が吹いている。空を見上げ、そして砂漠を見渡す。) | |
マーシュ | この静かさ、風の音・・・ 耳が痛くなりそうだ。 |
(後ろを向き、少し歩く。向かい側からレドナがやって来る。2人、立ち止まる。) | |
マーシュ | きみは・・・? |
レドナ | これ以上、邪魔はさせない。 |
(身構えるマーシュ) | |
マーシュ | 賞金かせぎとはちがう。 宮廷の者か!? |
レドナ | おまえはいなくなれ。 |
(近づくレドナ、後ずさりするマーシュ。レドナ、立ち止まる。顔を左に向ける。) | |
レドナ | 聞いたか。 ・・・仕方ないな。 |
(ひずみが現れる。飲み込まれる。) (神殿の様な部屋の中にいるマーシュ。) |
|
マーシュ | 5つ目・・・これが最後だ。 クリスタルを見つけなきゃ。 ・・・さっきのあいつは何物だろう? 近くにいるんだろうか? |
(歩く。レドナが立っている。) | |
レドナ | おまえを先には行かせない。 おまえは、消えろ。 |
(剣を構える。光が集まる。) | |
(声) | 剣をおさめろ、レドナっ! |
(光。シドが現れる。) | |
マーシュ | ジャッジマスター!? |
シド | 間に合ったか! |
(カードを構え、発動させる。レドナを包む光。) | |
シド | レドナ! ここでおまえの力を使ったら、クリスタルはこわれるぞ! |
(剣を収めるレドナ。) | |
レドナ | ・・・そうか。ここはクリスタルに近すぎる・・・。 オメガ、使っちゃダメなのか・・・。 |
シド | マーシュくんも退け! こいつと戦ってもムダだっ! きみでは勝てない! |
マーシュ | 最後のクリスタルなんだ。 帰れるわけないよ!! |
(右手を挙げるレドナ。ひずみにも似た闇。神殿騎士2人とタイタニアが2匹現れる。) (エンゲージ開始) |
|
マーシュ | このレドナって・・・ 何か妙な感じがする。 「きみでは勝てない」ってどういう意味なんだろう? |
レドナ | おまえはボクに勝てない。 |
マーシュ | え? |
レドナ | おまえはボクに勝てない。 絶対に。 |
マーシュ | こいつ・・・っ! |
(エンゲージ続行) | |
マーシュ | 勝てないっ! どうしてこいつ、いつまでも倒れないんだ!? ジャッジマスターの言う通り、ぼくの力じゃかなわないの!? |
レドナ | さっきからそう言っていた。 おまえはボクに勝てないって。 やっとわかったのか。 |
(剣を構える。光が集まる。) | |
マーシュ | またさっきの・・・! |
レドナ | 邪魔なんだ。 おまえはいなくなれ! |
シド | ロウを忘れたか、レドナっ! |
(レッドカードを掲げる。プリズンに送られるレドナ。) (エンゲージ終了。) |
|
マーシュ | 終わった、の・・・? |
シド | 終わった。きみの勝ちだ。 どうする? 帰りたいなら、ひずみの外までつれていくが。 |
(首を振るマーシュ。うつむく。) | |
マーシュ | 最後のクリスタルを、さがさなきゃ・・・。 |
(座り込むマーシュ。フェードアウト。) (クリスタルの間。シドとマーシュがやってくる。) (立ち止まり、マーシュを見る。) |
|
シド | きみをとめたりはしない。 行くがいい。 |
(頷くマーシュ。クリスタルへまっすぐ歩いてゆく。) (クリスタルから神獣マティウスが現れる。対峙する。) |
|
マーシュ | 人間族の力をつかさどる神獣・・・。 |
(近づこうとするマーシュ。神獣が語りかける。) | |
マティウス | どうして壊そうとする? |
マーシュ | !? |
(神獣がリッツに姿を変える。俯いているリッツ。顔を上げる。) | |
リッツ | いいじゃない、このままで。 |
マーシュ | リッツ!? |
(リッツ、一歩出る。) | |
リッツ | あたしはここに残っていたいわ。 マーシュだって、ほんとうはそう思ってるんでしょ? |
(俯くマーシュ。) | |
マーシュ | そんなこと・・・ない。 |
(肩を振るわせるリッツ。笑っている?) | |
リッツ | ほら、迷ってるじゃない。 やめちゃいなさいよ。 元の世界へ戻ったって、あなたはただの男の子に戻るだけなんだしさ。 |
(ドネッドへと姿を変える。) | |
ドネッド | そうだよ、お兄ちゃん。 こっちのほうが楽しいよ。 ここではなんでもできるんだ。 |
マーシュ | ドネッド! |
ドネッド | 戦士になってモンスターをやっつけたり、いろんな魔法を使ったり。 ゲームの主人公みたいになれるんだ。 あこがれてたんでしょう? この世界にはドキドキするようなこともいーっぱいある。 ちっちゃな田舎町でなんか考えられないような、大冒険ができるんだ! |
(ミュートへと姿を変える。) | |
ミュート | 元の世界に帰ったらどうなるっていうの? なにかいいことがあるの? |
マーシュ | ミュート・・・。 |
ミュート | マーシュのパパが帰ってきてくれるの? |
マーシュ | !! |
ミュート | パパとママは口をひらけばケンカばかり! パパは仕事のことしか頭になくて、ママはドネッドにかかりきり。 |
(顔をそらすミュート。) | |
ミュート | 学校でも家でも、いつだってひとり。 ・・・ボクと同じだよ。 ボクとマーシュは似てるんだ。だからきみの気持ちはよくわかる。 |
マーシュ | ・・・・・・。 |
ミュート | ここにいればいいじゃない。 さみしい思いだってしなくてすむよ。 |
(顔を伏せるマーシュ。) | |
マーシュ | ぼくだってここは好きだよ! だけど、ずっとここにいたらダメだと思ったから・・・! |
(St.イヴァリースでの格好をしたマーシュに姿を変える。) | |
マーシュ(贋) | すごいよ、マーシュ。 きみって強いんだ。 |
(本物のマーシュ、顔を上げる。) | |
マーシュ(贋) | そんなに強いなら、ここを出ようとするのはあたりまえだね。 |
マーシュ | ・・・やめてよ。 |
マーシュ(贋) | きみみたいな人にはこの世界なんて必要ない。 魔法なんていらないんだ。 ・・・そうさ、そうだよ。 きみは自分と向き合える強い男のコだもの。 |
マーシュ | やめろってば!! ぼくは強くなんかない! 強くなんかないんだっ!! |
マーシュ(贋) | 自分の気持ちに素直になればいいのに。 ムリしちゃってさ。 アタマだけでものを考えて、いつもガマンばかりしてる。 優等生すぎるのさ。 |
マーシュ | うるさいっ、消えろっ!! おまえはぼくじゃない。ぼくの知ってるだれでもない。 おまえは神獣だっ!! |
(贋マーシュ、すべるように横に移動。 マティウスが現れる。続いてリッツ、ドネッド、ミュートが現れる。) |
|
マーシュ | ぼくは世界を戻すんだ。 元の世界へ帰るんだっ! |
(リッツ、ドネッド、ミュート、もう一人のマーシュがヴァンパイアへ姿を変える。) (エンゲージ開始。) (マティウス、倒れる。) |
|
マーシュ | これで戻るんだ。 なにもかも、元通りになるんだ。 |
(シドとマーシュがクリスタルの前にいる。 クリスタルが砕け散る。何も起こらない。マーシュが周りを見回す。) |
|
マーシュ | どうして? なんでなにも起きないの? 他にもまだクリスタルがあるていうことっ!? |
(シド、マーシュに向き直る。) | |
シド | 私の知る限り、クリスタルはこれですべてだ。 |
マーシュ | じゃあどうして!? |
(突然、暗くなる。) | |
(声) | それは、まだこの世界が望まれているから。 |
(景色が反転する。写真のネガとポジを逆にしたような。) (レメディが現れる。シドとマーシュ、レメディを見る。) |
|
レメディ | くさびはなくても世界は残る。 この世界が望まれるかぎり。 |
マーシュ | あなたは、だれ? |
シド | レメディ、女王レメディだ。 |
マーシュ | この人が・・・ ミュートのママ・・・。 |
(レメディ、目を伏せる。) | |
レメディ | ミュートがこの世界を望んでいる。 ミュートはまだ私を必要としている。だから世界は残るの。 |
マーシュ | そんな! |
(レメディは顔を上げ、マーシュを見る。) | |
レメディ | ミュートだけではないわ。 他にも・・・。 それに、あなた自身だって。 |
(レメディ、顔を戻す。部屋は元に戻る。光。) (デライラ砂丘に戻る。顔をあげたマーシュにシドが問う。) |
|
シド | クリスタルをこわしても、世界は戻らなかった。 きみはこれからどうする? |
(マーシュ、顔を伏せるが、すぐに上げる。) | |
マーシュ | ・・・ミュートに会おうと思います。 会って、話をして・・・。 それから先はぼくもわかりません。 |
シド | ミュートが宮廷から出ることはない。 なにか方法でもあるのか? |
(首を振るマーシュ。) | |
シド | すまないが、私はなにも手助けできない。 |
(マーシュ、頷く。) | |
マーシュ | いいんです。 決めなくちゃいけないのはぼく自身だから・・・。 |
シド | そうか・・・。 納得のいく答えが見つかるといいな。 |
(マーシュ、頷く。背を向けて別々に歩き去る2人。) 【音なしの砂】クリア。 |
RUMOR
【謁見の日】
宮廷の恒例行事、レメディ女王とミュート王子の謁見式が近づいている。
この日は別名「贈り物の日」と呼ばれ、さまざまな品物が献上される。
はたしておふたりを満足させる逸品はあるのだろうか?